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2022/04/01
政府は令和3年2月19日、罪を犯した18歳,19歳の者の手続・処遇に関する「少年法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。
そして、これらの内容を盛り込んだ少年法の改正案が衆院本会議で可決された後,令和3年5月21日参院本会議で可決、成立し、令和4年4月1日から施行されます。
改正法の概要としては、少年法の適用年齢自体は引き下げず、全事件を家庭裁判所に送り、生い立ちなどを調査する仕組みは維持し18歳・19歳は、引続き少年事件の対象とする一方で、「特定少年」と位置づけ、家裁から検察官に逆送する対象を拡大しました。
その他、起訴された場合には実名報道が可能となります。
なお、衆院法務委員会は、家裁が逆送を決定する際に犯情(犯罪にたる事情)の軽重を考慮することや、実名報道の解除が健全育成の妨げとならないよう配慮することなど周知に努めるよう政府に求める付帯決議を採択しています。
現行法 | 改正法 | |
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適用年齢 | 20歳未満 | 18歳、19歳は特定少年として特例規定を設ける(少年法の対象) |
家庭裁判所送致の対象 | 全件 | 全件 |
原則的に検察官に送致する対象事件 | 16歳以上で故意の犯罪によって被害者を死亡させた事件 | 特定少年は罰則が1年以上の懲役又は禁錮にあたる罪の事件も対象となる |
報道について | 本人が特定される本名や顔写真などの掲載禁止 | 特定少年は起訴(略式処分は除く)された段階で禁止が解除される |
この度の改正においても、以下の点は変更がありません。
少年の健全な育成を目的とする、少年法の理念に沿った手続きは変更されません。
令和4年4月1日から施行される少年法では、現在、20歳未満としている「少年」の定義は維持した上で、18歳、19歳の者について,少年法の適用対象である「少年」と位置づけ「特定少年」と呼ぶこととしています。
原則として、特定少年についても、現行少年法の基本的枠組みを概ね維持しています。具体的には、全ての事件は家庭裁判所に送致され(全件送致主義)、家庭裁判所調査官の調査が行われるとともに、少年鑑別所での観護措置が行われます。
そして、家庭裁判所調査官が科学的専門的知識を活用して調査をしたうえで、保護観察や少年院送致等の保護処分を行います。終局処分に先立ち、試験観察処分を実施することができるのも従来と同様です。
他方で、特定少年の特例として新たに章を設けています。
民法が改正されて、成人の年齢が令和4年4月から20歳から18歳に引き下げられます。一方で、少年法も上記のように改正されたことにより、18歳と19歳は民法上、「成人」となるものの、少年法では「特定少年」として下記のような扱いとなります。
※改正案の附則には、政府は、本法の施行後5年を経過した場合において、改正後の少年法等の施行状況並びに施行後の社会情勢及び国民の意識の変化等を踏まえ、罪を犯した特定少年に係る事件の手続及び処分並びにそうした特定少年に対する処遇に関する制度の在り方等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされました。
特定少年の特例としておさえておきたいことは「逆送される対象事件の拡大」と「実名報道」の点ですが、具体的には,下記のような改正がなされます。
原則逆送事件の対象事件を拡大しました。
具体的には、従前の故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件に加え、短期1年以上の拘禁刑にあたる事件の行為時点で18歳,19歳の者を対象としました。短期1年以上の拘禁刑にあたる事件の具体例として、強盗罪・強制性交等罪・非現住建造物放火罪・建造物等以外放火罪等が挙げられます。
※拘禁刑とは、懲役・禁錮を統合し2025年6月1日に施行される刑罰です。
特定少年に対する保護処分は①6月の保護観察、②2年の保護観察、③少年院送致の3種類が定められました(年齢は処分決定時を基準)。
現行法と異なる点は、
です。
上記のとおり、保護観察は、①6か月の保護観察、②2年の保護観察の2種類が定められ、②については、遵守事項違反があった場合には、上限1年の範囲内で少年院に収容できる期間を定めて決定します。
また、家庭裁判所が少年院送致を選択した場合、上限3年の範囲内で、「犯情の軽重を考慮」して収容できる期間を定めます。そして、少年院における実際の処遇期間は、裁判所が定めたその範囲内において、処遇効果や環境調整の状況を見きわめながら、仮退院、退院の判断をすることで決まります。
犯行時18歳と19歳による犯罪については、少年審判で逆送とされ公判請求がされた場合(起訴された場合)は、実名報道が可能となります。
ぐ犯の規定は,18歳・19歳の者には適用しないこととされました。
この結果、従来ぐ犯を適用して家庭裁判所に送致されていた18歳以上の少年に対する対応としては、行政的支援や福祉的支援を検討することとなります。
少年法の改正により、行為時に18歳・19歳の事件について、成人事件の手続きとなり、公判請求がなされた場合には、推知報道を禁止する規定が適用されない運びとなりました。
他方で、捜査段階、家庭裁判所における審判段階においては、これまでどおり、推知報道の禁止が及びます。
報道に関し、今後は少年法改正の趣旨を踏まえ、18、19歳の特定少年については事件ごとに結果の重大性や社会的影響などを総合的に検討して実名・匿名を判断することになろうかと予想されます。
推知報道の禁止が解除されたとしても、報道機関は、実際に推知事項を報道するか否かについては、情報がインターネットに掲載されることにより半永久的に閲覧可能になることも鑑みて、慎重に判断されるべきです。
なお、最高検は全国の高検、地検に対し、実名公表を検討するのは裁判員裁判の対象事件など「犯罪が重大で地域社会に与える影響も深刻な事件とすべき」とする通知を出しています。これは、事件公表が少年の更生を妨げない「十分な配慮」を求める一方、裁判員裁判対象事件は公共性が高い重大事件のため、報道は可能だとして線引きするものといえます。
法務大臣は、「成長過程にある若年者の改善や更生,再犯防止などに関わる問題であり、民法の成人年齢と一致しなければならないものではない。18歳と19歳の事件はすべて家庭裁判所に送致するという、少年法の基本的な枠組みを維持することが適当」と述べられました。
18、19歳の者は、成長途上にあり、罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待できます。そのため、改正法が、18歳及び19歳の者について引続き少年法の適用対象とし、全件を家庭裁判所に送致し、調査・鑑別を実施した上で保護処分を決定するという現行少年法の基本的枠踏みが維持されたことは、評価できます。
しかし、一方で、特定少年の特例は、18歳・19歳の者への実質厳罰化の側面があることは否めません。改正法により18歳、19歳の少年に前科をつけることを認め、前科があることによる資格取得の制限等の弊害もあります。
少年の更生にとって厳罰化を進めていくことがはたして本当に適切なことなのか、これまでの少年法の理念や内容を後退させるものではないのか、大きな問題をはらんでいます。また、推知報道については、インターネットをはじめSNS上での掲載により少年の情報が半永久的に閲覧可能になることも踏まえ、少年の健全育成及び更生の妨げにならないように十分に配慮する必要があります。
改正少年法の下において、18歳及び19歳の者に対しても、引続き少年の健全な育成を期する少年法の目的及び理念に合致した適正な運用が行われるよう、必要な体制整備等の取り組みを進めていくことが重要であると考えます。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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