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2021/07/01
一般的に,少年鑑別所に入ることを「観護措置」という言い方をします。
観護措置は、家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の心情の安定をはかりながら、その身柄を保全するための措置であり、具体的には在宅のまま家庭裁判所調査官の監護に付する方法(少年法17条1項1号)と少年鑑別所に送致する方法(少年法17条1項2号)があります。
通常,観護措置といえば、後者を指します。少年の身柄を少年鑑別所に収容する措置がとられた事件を身柄事件と言います。そしてそれ以外の事件を在宅事件と呼びます。
観護措置は、審判や調査のために少年の身柄を確保するという側面と、少年を非行環境から切り離して少年鑑別所による鑑別を受けさせることにより、少年の保護を図るという側面もあります。その意味で、成人事件の勾留とは意味合いが異なります。
捜査段階で身体の拘束をされた少年が、家庭裁判所に送致されたときに、観護措置がとられるのがほとんどの場合です。逮捕・勾留を経た少年が、家庭裁判所に送致され、裁判官が観護措置を決定します。
観護措置を決定するには、主に、①非行を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること、②審判を行う蓋然性があること、③審判を行うため観護措置の必要があることが必要です。そして、観護措置の必要とは、少年の身柄確保の必要性、少年の保護の必要性、心身鑑別の必要性等が含まれると解されています。
担当裁判官は決定に先立って少年に対して、黙秘権・付添人選任権(弁護士を選任する権利)をわかりやすく告知したうえで、審判に付すべき事由の要旨を告げて、陳述の機会を与えなければならないものと規定されています。
当事務所にお寄せいただく相談として、「在宅事件で捜査がすすんでいますが、家庭裁判所に送致された後は観護措置がとられることはあるのですか?」というものがあります。
答えとしては、可能性は低いものの、「身柄引き上げ」として観護措置が取られる場合があります。
身柄引き上げのリスクをさげるためには、捜査段階からなるべく早く少年の問題点を理解し、その解消に向けて進めていくことです。
観護措置の期間は、原則として2週間ですが、特に継続の必要があるときは、更新することができます。更新決定については、通常は1回しか許されませんが、特に一定の要件がある場合には、更に2回(通算8週間)許されます。
「少年鑑別所にはどれくらい入るのですか?」というご質問をよくいただきますが、現在の実務では、更新が1度なされることが通常で、収容期間は4週間となります。
なお、例外的に①犯罪少年に係る死刑・懲役又は禁錮に当たる罪の事件で、②非行事実の認定をめぐって、証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことの決定がなされているか、又はこれを行ったものについて、③少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合に、2回を限度として更新を行うことができます(少年法17条4項但書)。
少年鑑別所は,①家庭裁判所等の求めに応じ,鑑別を行うこと,②観護の措置の決定がとられて収容している物等に対して,観護処遇を行うこと等を目的とする施設です。
少年鑑別所では、鑑別技官との面接や様々な検査によって、資質の鑑別や行動の観察が行われます。
また、定期的に裁判所調査官が面会にいき、事件のことや、家族、学校、交友関係について調査を行います。
その他、運動や読書、作文課題、ビデオ視聴など、少年の課題に応じた教育的プログラムが実施されます。
少年鑑別所は,少年を教育する施設ではありませんが,生活態度に対して助言・指導を行ったり,学習等の機会の提供などが行われています。
栄養のバランスが取れた献立となるよう工夫されています。
一般的な例として次のようなスケジュールです。
「診察」:入所したときは,速やかに健康診断が行われます。
「学習支援」:希望により,教科等の学習支援が行われます。
「講話」:就労の心構えや性と命の大切さなどの講話が行われることがあります。
「面会」:保護者,学校の先生,弁護士との面会ができます。
「日記」:一日を反芻し,気持ちを整理します。
「助言・相談」:一人一人に担任教官がつきます。
これまで我が国の少年保護手続においては、少年の再非行の可能性や教育上の必要性の把握に特化した統一的な手法(アセスメントツール)は設けられていませんでした。
そこで、法務省矯正局では、平成20年度から「再犯防止に向けた総合対策欧米」の一環として、少年の再非行防止に資するための調査ツールである法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)を開発し、少年鑑別所において運用を開始しています。
これは、再非行等に密接に関連する調査項目を少年鑑別所の心理技官が面接や鑑別資料に基づいて評定することにより、少年の再非行の可能性と教育上の必要性を定量的に把握するものです。
すなわち、心理学、犯罪学等の人間科学の知見を踏まえて、少年鑑別所における実証データに基づき、統計学的な分析を経て開発したもので、対象者の再非行の可能性等を把握するとともに、保護者との関係性の調整や社会適応力の向上等、何を目標とした働きかけを行えば再非行を防止できるのかを明らかにしようとするものです。
少年鑑別所での鑑別のうち、観護措置の決定により少年鑑別所に収容されている者に対して行う鑑別を収容鑑別といいます。そして鑑別結果は、鑑別対象者の資質の特徴、非行要因、改善更生のための処遇指針等とともに鑑別結果通知書に記載されて家庭裁判所に送付され、審判の対象となります。
一方、少年鑑別所に収容されていない者に対して、少年鑑別所に来所させて行う鑑別を在宅鑑別といいます。例えば、捜査段階から在宅捜査(又は捜査段階で身柄解放後に在宅捜査)が進められて、家庭裁判所送致後も在宅のまま調査が進められた場合に、この在宅鑑別が利用されることがあります。
なお、矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料によると、令和元年度の収容審判鑑別の判定と審判決定等については下の表のとおりです(令和元年度犯罪白書を参照)。
鑑別の判定 | 審判決定等 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 終局決定 | 未了 | |||||||
保護処分 | 児童相談所長による送致 | 検察官送致 | 審判不開始・不処分 | 観護措置の取消 | 試験観察 | ||||
保護観察 | 少年院送致 | 児童自立施設・児童養護施設送致 | |||||||
総数(人) | 4,935 | 1,960 | 1,713 | 135 | 23 | 32 | 32 | 138 | 902 |
保護不要 | 26 | 11 | 1 | - | - | - | 8 | 3 | 3 |
在宅保護 | 1,729 | 1,336 | 25 | 4 | 12 | 1 | 10 | 53 | 288 |
少年院 | 2,976 | 602 | 1,669 | 20 | 3 | 5 | 13 | 73 | 591 |
児童自立支援施設・児童養護施設 | 153 | 8 | 7 | 111 | 8 | - | - | 1 | 18 |
保護不適 | 51 | 3 | 11 | - | - | 26 | 1 | 8 | 2 |
【考察】
上記の表で鑑別の結果が「少年院」の欄がありますが、鑑別結果として少年院が相当と判断される場合でも、一旦処分を留保する「試験観察処分」や「保護観察処分」という結果がでています。
上の表からも分かるとおり、たとえ少年院の可能性が高い事案であっても
等の対応を行うことにより、少年院をはじめとする施設送致を回避できる可能性があることを示唆しています。
しかし、審判の数日前にあわてて対策しようとしても間に合いません。
少しでも早い段階から活動・対応を行っていくことが、施設送致の回避につながります。
【住所】
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【電話】072-233-3326(代表)
少年鑑別所から少年を裁判所に連れてくる都合により,少年審判の開廷日が限られています。
少年鑑別所に収容されている身柄事件についての開廷曜日は以下のとおりです(変更される可能性はあります)。
弁護士上村武史
観護措置の必要性がなく取り消すべきと請求することや、観護措置決定に対して異議申し立てをすることにより不服を申し立てることができます。事案に応じてこれらの権利を検討することも重要です。
当事務所の弁護士のこれまでの経験からして、観護措置が取り消されるケースとしては、事案が軽微であったり、前歴がない場合、観護措置をとると進学などに大きく影響する場合、等が考えられます。
その他、少年事件について見通しや対応策を知りたい方は、少年事件専門の弁護士による無料相談をご利用ください。
当事務所の無料相談が、お子様にとってよい結果につながれば幸いです。
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